堀淳一著、消えた鉄道を歩く、講談社文庫(絶版)

kazukiharuna2003-11-12


奥付は昭和61年初版発行。
私が廃線跡をめぐることに目覚めたのが、昭和62年ごろなので、さらに前になる。
今でこそ廃墟や廃線跡に関する書籍が、山のように出版されているけれど、情報も少ない当時とあれば、「こんなうらぶれた趣味を持っているのは、自分ぐらいかも」と思ったのもむべなるかな(と、ちょっと正当化)。


その後、廃線跡歩きの大先輩として、堀氏を知り、著作を集め始めたのだけれど、この「消えた鉄道を歩く」は、なかなか入手できなかった。
「そしえて」なんて聞いたことも無い出版社の本は、注文で一発で買えたのに、天下の講談社がなんてことだ、と憤ったのを覚えております。


出版における廃線跡ブームと前後して、実際の廃線跡も歩く人たちが増え、地元でもそれらを綺麗に整備するようになってきました。それはそれで鉄道が愛されていた証拠でもあり、産業遺跡として重要視され始めたということであり、歓迎すべきことと思う。
でもね、人々から打ち捨てられたという侘しさを抱え持つ廃線跡には、もう巡り会えないのかなと思うと、わかってはいるけれど、残念なキモチにもなる。逆に言えば、わずかな期間とはいえ、「間に合った」ことをシアワセに思うべきなのかもしれない。


堀氏は、エッセィストクラブでも活躍されているだけあって、文章が軽快で、読みやすい。
紀行文であって、ルポではない。そこを混同してはいけないね。